日本顎咬合学会
6月8、9日に日本顎咬合学会 第42回学術大会・総会に参加するために国際フォーラムへ行ってきました。
この学会には研修医の時から毎年欠かさず参加をしており、口演発表や認定試験を受け、認定医を取得し、歯科医師人生の礎になっている学会です。
この学会は世界でも著名な超一流の先生方の講演を拝聴できます!
学会名にあるように噛み合わせはもちろんのこと、歯科治療の全てを網羅している学会は他になく、各分野のスペシャリストから直接お話を聞けます。咬合理論を基に義歯、咬合再構成、インプラント、矯正など数々のカテゴリーに分かれており、デモンストレーションもあるので、翌日からの臨床に活かせられます。
特に今回は、デジタル歯科医療に関してのトピックが増えており、口腔内スキャナーIOSや顎運動、AIによる診断からインプラントまで多岐にわたる研究をされているDr.Wael Attの特別講演は、デジタルワークフローを用いて全顎に及ぶ機能と審美の統合に目を奪われました。
今月から歯冠補綴修復の一部で保険適応される光学印象(口腔内スキャナー)の特性を理解し、遠隔の歯科技工士さんとの連携をよりスムーズにとれるデジタル機器も発表されており、臨床において使えることが楽しみです。口腔内スキャナーだけでなく、CBCT撮影、フェイススキャン、顎機能運動の全てをマッチングすることで、より精密な分析、治療方針の立案、精密な歯科治療ができそうです。
特に印象に残った講演やセッション、ワークショップなどを共有したいと思います。
1. Airwayを考慮した歯科治療を行ううえでのデジタル活用
睡眠歯科の治療を行ううえで診断はとても重要であり、問診票や口腔内所見、レントゲン撮影を用いたセファロ写真、顔貌所見、CBCTを用いて気道容積の確認・鼻閉の有無、顎関節の状態、PSG、上気道解剖学的因子、上気道筋低反応性、呼吸不安定性、覚醒性などを多方向から確認することが重要です。
SASの推定罹患患者は200万人と言われており、決して稀な疾患ではありません。
睡眠障害は循環器疾患との高い合併症があり、高血圧症は2倍、虚血性心疾患2〜3倍、脳血管障害3〜5倍のリスクがあることが知られています。
ここ10年で子供のOSA(閉塞性睡眠時無呼吸)の重要性も認識され、米国や欧州ではOSAのための診療ガイドラインが作成されるほどです。
医師の診断のもと、歯科治療でのOA(Oral Appliance)やMSE(Maxillary Skeletal Expansion)をデジタル技術を駆使をして装置の作製を行い、以前までは定量的に評価ができなかった治療前後の評価をデジタル機器を用いて行います。
2. デジタル歯科最前線
デジタルデータを活用したトリートメントワークフローの変成が起こり、口腔内スキャナーの応用は、CBCTデータとのマッチングでインプラントの埋入ポジションのプランニング(Xガイド)、サージカルガイドの作製、最終上部構造作製までを可能とし、天然歯においても上部構造作製、診察診断、患者様への説明用コミュニケーションの応用と多岐に渡り進化を続けています。
細部においてデジタルに特化した支台歯形成の注意点、歯肉圧排糸の挿入開始点・挿入時の注意点、既存の義歯をデジタル上で複製を行うコピーデンチャー、口腔内スキャナーの印象方法、インビザラインのスマイルアーキテクトを用いることで口腔内スキャンしたデータを治療終了時をAIで予測し、治療のゴールをわかりやすく画像で比較してくれます。
盛りだくさんの内容に、普段行っている診療の再確認ができました。
3. 咬合と全身の関連性
残存歯数と生命予後・要支援・要介護の関連性が明らかになっています。残存歯数が20本以上、10〜19本、9本以下の3つの群に分かれたデータから残存歯数が少ないほど生存率、自立喪失の悪化が見られます。
しかし、残存指数が少なくてもブリッジや義歯、インプラントなどの欠損補綴修復の治療をして、咬めるようになる事で、生存率、自立喪失の改善ができるとの報告がありました。
しっかり噛むことの大切さをお伝えしていきます。
研究段階ではありますが、歯周病の治療薬となる薬の開発をしているとびっくりする内容の報告がありました。実現するのが楽しみです。
咀嚼機能や栄養摂取状況が、免疫機構や中枢神経機能に影響を与えることがわかっているため、重症化をさせないこと、咬合再構成を提供していきたいですね。
まとめ
今回の学会参加は非常に有意義な経験となりました。毎年学会に参加していると普段は遠方のためなかなか会えない友人と再会でき、治療技術や日々の悩み、目標などを話すことでモチベーションが高まり互いに自己研鑽して、再度口講演発表をしたいですね。得られて知識やネットワークを活かして、診療に一層励んでいきます。